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How to improve observation skills? 【book review】

日常にいろいろなヒントが隠されていて

楽しく生き抜く術は観察からだなぁ、と

気が付かせられた。

 

📘小説家の一日

書くことがテーマの短編集、と

読了後に知って成る程と思った。

不倫を始め人間の野性や

モヤッとした部分がさらっと、

書き連ねられている印象で

始めは驚いた。しかしながら

日記など1人で黙々と書く時に

口では誰かに伝えられない内容を

コソッと自分だけの紙に

書くことがある。勿論、

そんなプライベートなものを

誰かに見せることは普通はない。

だから、なんだか不思議な感じで

いい意味で生産性のない文に

リアリティがあった。

 

【園田さんのメモ】は自分の気持ちを

付箋で主人公に渡してくる、

園田さんの存在が鮮烈だった。

園田さんの行為は機械的なのに

メモの中身や時々見え隠れする、

園田さん自身は人間味が溢れていて

アンバランス感が怖かった。

【窓】は読んでいて苦しくなった。

主人公を虐めるクラスメート達は

主人公の存在にどこかしら畏れを

抱いているのではないかと思う。

他人のことは、小さい窓から

家の中を覗いた時に

全てが見える訳ではないように

中々よく分からず、畏れから

虐めている様に見えた。それに対し、

主人公が保健室で出会う生徒は

作中では存在が明かされないが

落書きを介して心を通じ合わせた。

互いに2人は何者なのか

分からないはずなのに、ずっと

クラスメート達よりも今後、

心を通わせるであろうという

予感を持たせた。ただしそれが

単純に仲良くなる話ではなさそう、

という含みも持たせているところが

意地悪だった。

【料理指南】は一見、仲の良い

女友達の関係性を描いている様で

時折ドロっとした愛憎が垣間見れた。

どんなに手料理で想う相手を

自分のものにしようとも、結局

気持ちは言葉でしか伝わらない。

一方、書き起こした言葉は中々

捨てられないもので、特に

気持ちを込めて書いたものには

魂が宿っている様に思えた。

それはラブレターだけでなく、

誰かのことを想って書く全てに

当てはまると思う。

 

📗ほんのきもち

作家たちの贈り物についての

エピソードをまとめた本。

贈り物のエキスパートから

苦手を感じている人までいたけれど

形の有無ではなく、贈る相手に

気持ちを伝えるために誰しもが

試行錯誤したエピソードを垣間見て

それこそ、福を分けてもらった気がした。

彩瀬まるさんのきらきらゼリーは

青春の輝きとキュンとする優しさで

印象に残った。また乾ルカさんの

飼い犬、ガブリエルの話は

感動して涙が出た。

 

📕ロンドン・アイの謎

ミステリーとして完璧の構成だった。

全てのシーンが無駄なく繋がった時の

気持ちよさが最高だった。

個人的にグロテスクな描写も

あまり好きではないため、

ハッピーエンドなところも高得点。

イギリスの話だけど探偵ではなく、

姉弟がそれぞれの長所を生かし

協力して謎を解くところが

応援できたし、メインの謎だけでなく

登場人物たちの私生活の課題まで

何気なく解決していて素敵だった。

 

📘小さなことばたちの辞書

辞書に載る言葉は言葉の全てのようで

載っていない言葉で世界は溢れていた。

オックスフォード大辞典の編纂者の娘が

父や言葉の博士など、学位ある男性たちに

隠れて集めた言葉は女性が使う言葉や

貧しい者が使う言葉だったが、

彼女が書き残すことで当時は

日の目を浴びられなかった人々が

歴史に記されることになっていた。

彼女がそれを成し遂げられたのは、

幼い頃より言葉に囲まれて過ごして

辞書に作為的に載らない言葉の存在に

気が付いたからだと思う。

また、言葉遣いで生まれ育ちが

明らかになる、イギリスだからこそ

言葉の平等がキーポイントだった。

作中にbondmaid(奴隷娘)という

言葉が出てきて、人を指す言葉として

あまり嬉しいものではないが

誰しもが何らかの使命を持ち、それを

達成することに課せられている点では

誰しもが何かのbondmaid

等しいのかもしれないと思わせられた。

 

📕三流シェフ

アイデンティティは大切で

逃れられないものだからこそ

苦しみとなることもあるとわかった。

三國シェフの自伝的小説。下積み時代に

夢を叶えるために必死に貪欲に

努力する姿を知ると、三國さんや

日本のフレンチを更に味わえそう。

頑張る姿を見ている人は、

周りに必ずいるし、どの業界でも

大成する人とは周囲をファンにして

自分の力や運にするのだと思う。

 

📙間取りと妄想

不動産屋からポスティングされる、

間取り図のチラシを実はよく

週末に眺めてしまう癖がある。

特に新しい家が欲しいとかではなく

図面から、住人Aの暮らしを

想像するのが楽しい。

だからこの本を読み、同じ癖がある人、

いや、妄想レベルの高さから言えば…

師匠?!を見つけた!

という嬉しい気持ちと同時に

お話のリアリティにゾワっとした笑

ここで恐ろしさを感じてしまったのは

いつも間取り図を見る時、何故か

他人のプライバシーを侵害するような

悪い気持ちになるからかもしれない。

間取りは人々の生活スタイルに

大きな影響を及ぼす。

帰宅後の動線は部屋の位置で決まり、

窓の位置で過ごしやすさが変わる。

また双子のための間取りで

家の間取りが与える人格への影響が

面白かった。双子が家を出て、それぞれの

家を持つ時、どんな間取りで建てるのかな。